今回は特別二本立てとなっております。
テーマは『亮のやきもち』と『甘々でERO』です。
『亮のやきもち』はどなた様でもお持ち帰りはOKですが、『甘々で〜』は未成年の方の閲覧・お持ち帰りは厳禁とさせていただきます。
サイト等に貼られる方はお手数ですが、はじっこでもよいので、サイト名『しずく』と管理人名『季咲』の表示だけお願いします。
誘 惑 の こ い び と
「ねーねー見た?!」
「見た!!超ヤバくない?!」
通り過ぎた女が甲高い声を発して振り返る。
その視線の先は亮の目の前に座る長身の男。
己の恋人である一ノ瀬薫に注がれていた。
薫はやたら顔が整っている。
街を歩けば道行く女が次々と振り返る。
女だけならまだいい。
…男も振り返る。
とにかく目立つ。
事実、今もカフェの片隅で目立たないように座っているのだが、周囲の視線は薫に集中していた。
綺麗なのだから、仕方がないと思う。
思うけど…。
亮はなぜかそれが面白くなかった。
「ムカつく」
不機嫌になっていく亮に、薫が微笑む。
「どうしたの…?」
悪気は無いのだろうが、その暢気な笑みが更に亮の苛立ちに火をつける。
ていうか、気付けよ!こんだけ見られてんのになんでそんなに平然としてられるんだお前は!!
そう怒鳴ってやりたかった。
「ね!後ろの人見て〜!!」
「わ!超イケてんじゃん。モデルかな」
またか。と溜め息が出る。
「一緒にいる子ダレ?弟?」
「まっさか〜!!似合わなさスギ」
キャハハとバカっぽく笑う後ろの席を蹴りたい衝動に駆られつつ我慢を装う。
「聞こえてるっつーの…」
「亮?」
心配気に小首を傾げる薫にまたしても後ろの女が騒ぐ。
「カワイイ〜」
カシャカシャとシャッターを切る音付きで。
「どうしたの?気分悪い…?」
「…んでもねーよ」
薫の顔を見ていたくなくて、フイッとそっぽを向いてしまう。
それが子供っぽくて、ただの八つ当たりでしかない事に自己嫌悪に陥る。
「平気?」
心配そうに頬に触れる手。
いつもなら受け入れている。
けれど、今は。
「…わんなっ……」
小さく払いのけると、途端に薫の表情が悲しそうに曇り、伸びていた薫の手は萎んだ花のように項垂れた。
ああ、苛々する。
そう思った刹那―――。
ガタッ。
振り払ったはずの手が亮の腕を引いて、
ちゅ。と薫が亮の額に唇を当てた。
その光景に、亮を含めた周りの空気は凍りついた。
「…な…な…っ」
「行こう……」
そう囁いた後、
あまりの事に顔を赤らめる事しか出来ず放心している亮の腕を引っ張って店を後にした。
「おま…っさッき……」
人気の無い公園で漸く足を止めた薫に、亮は戸惑いながらも、珍しく強引な薫に言葉が見つからず黙りこくってしまった。
「…うん……?」
優しく訊き返すその様子は、もういつもの薫だった。
「だって…あそこに居たくなかったんでしょ……?」
「えっ…何言って」
「だって…泣きそうな顔してたから……」
「それは……っ」
言葉を紡ごうと開いた唇は薫の唇によって塞がれる。
「…っ!」
身を捩って抵抗すると、唇はいともたやすく離れた。
「…りょう……?」
「…だよ、」
「え?」
「ど…せ、似合わねぇよ」
ずっと、解っていた。周りからどう見られているかなんて。
街中で見た、鏡越しに写った二人は、どう見ても不釣合いだった。
けれど、薫が気付かないから。
亮も気付かないフリをしていただけだった。
「薫は、俺なんかといるより…もっと……薫に似合う誰かと」
「りょう」
さら。と薫の髪が亮の頬に触れた。
間近に迫った薫の顔は綺麗で、より惨めな気分になる。
「もしかして…やきもち、焼いたの?」
核心を指摘されて亮の頬がみるみる火照っていく。
「ちが…っ」
否定の言葉は甘いキスで遮られた。
「…うれしい……大好きだよ、りょう」
壊れ物を扱うように抱きすくめられて、耳元で甘く囁かれて、亮の心は次第に溶けてゆく。
仄暗い想いも。
嫉妬の苛立ちも。
氷が溶けるように、全てが溶けて、亮の眸から涙となり、それは流れ消えていく。
そこには、ただもう今は薫を愛しいと思う、その感情だけが溢れていた。
「薫……好き…だから、」
「…亮……」
「ずっと…傍にいて?」
甘えるように擦りつく亮を薫は愛しそうに抱きしめた。
『甘々〜』は『亮のやきもち』のお話のその後といった感じで微妙に続き物っぽくなってます。
『甘々でERO』は性的描写が含まれますので苦手な方はご注意くださいませ。
見たい!って方は
こちらからドウゾ。
2007.4.17.UP