エンハセ。たまにはこんなのも。
























ハ セ ヲ の 受 難






受難というものは頼まなくても向こう側からやってくるものである。

「……はあ?」
呆れた声で、ハセヲはエンデュランスを見上げた。
「何だって…?よく聞こえなかったんだけど」
「だからね……ボクと結婚して…」
何かの冗談かとも思ったが、上機嫌でハセヲを見つめるエンデュランスの目はきらきらと輝いていて、本気だと認めるしかなかった。

話があると呼び出されてやってきたエルディ・ルーはひっそりと静まり返り、二人の息遣いまでも反響しそうで、ハセヲは盛大に溜息をついた。
「ったく、ここにきて正解だったぜ…」

最初はわざわざここまでくる必要はないとハセヲは断ったのだが、エンデュランスがどうしてもと駄々をこねた。
「こんな内容聞かれたら、BBSに何書かれるか…」
ぶつぶつと独り言ばっかり言ってなかなか返事を返さないハセヲに、焦れたようにエンデュランスは擦り寄った。 「………駄目?」
「あたりまえだろ!!」
立ち上がって怒鳴る。あまりにも大声だったせいか、ハセヲの怒鳴り声はいつまでもこだましている。

あからさまに肩を落としたエンデュランスは一言「ごめんね……」とだけ言って、その場を立ち去ろうとした。



「……待てよ」
ぱっと振り返るエンデュランス。考え直してくれたの?と顔に書いてあった。
「一応言っておくけど、承諾したわけじゃねぇ」
ハセヲはゆっくりとエンデュランスに歩み寄った。
「…なんだって、そんな事考えたんだよ」

「これ…」
メールで送られてきたURLの貼り付けをクリックする。

開いた瞬間に絶句した。
「………………」
エンデュランスは期待の眼差しでハセヲを見つめている。
「………………」
そのURLはハセヲもよく見ているNews Captureの記事だった。

タイトルはこうあった。


『唖然呆然! 花嫁は実の母?!』

ハセヲはこの時点で読む気が失せたのは言うまでもない。

記事を要約すると、こうである。

同じギルドで付き合ってゲーム内で結婚をしたが、いざリアルで会ってみるとそれは実の母親と息子だった…といういかにもなオチ。

「………で。なんで結婚なんだよ。俺達は既にリアルでも会ってるわけだし、何を期待してるのか知らないけどこういう結末はないぞ」
「違うよ、ハセヲ……」
ずいっとエンデュランスが近寄ってくる。
「見るのはここだよ……」
「…え?」

今度はメールに直接記事を打ち込み、ご丁寧にアンダーラインまで入れてくれている。
「どれ?………!!!!」
『それ』を見たハセヲの両手は、わなわなと怒りで震えた。
その部分とは…。

「『The World内で結婚式イベントを行い、夫婦となった』〜?!」

うっとりとエンデュランスが目を瞑る。
「知ってた?結婚式イベントなんてあるんだね…」
ハセヲはようやく、エンデュランスの言いたい事が解った。

「ねえ、ハセヲ…」

間違いない。

「これはどこに申請したらいいんだろう…。やっぱりCC社に問い合わせするのかな……?」

こいつは…。

「楽しみだね……」

本気で、俺と。

「ボク達夫婦になれるんだよ…」

結婚式イベントするつもりだ!!!



「ちょ、ちょっと待て!!」
浮き足立つエンデュランスの腕を掴み、ハセヲはその場に座らせた。
「いいか、良く考えろよ。リアルは別としてもだ。俺達はPCが男タイプだぞ」
「前にも言ったよ…。『ボクがハセヲを愛する想いに性別なんて関係ない』って…」
「いや、そういう事じゃなくて!!CC社が男同士の結婚なんて認めるはずねえだろ」
「……………大丈夫だよ」
「…今、何考えてた……」
「……断られたらお願いしようって考えてた」
 
絶対嘘だ。もしそれが本当だとしてもエンデュランスのそれは、お願いという名の脅迫だ。

や、やばい。ここは何としてもエンデュランスに結婚イベントを諦めさせなければ…。

ハセヲは真剣に考えた。くだらない問題だが、ハセヲにとっては大問題だった。脳内をフル回転して、妙案を練る。



「なあ、エンデュランス」

「…なぁに?」

「おれたちに、そ、そんなものひつようかなあ」

「……え?」

「そんなものがなくても、おれたちはいつもいっしょだろ」


棒読みな台詞。
言いながら体中に鳥肌が立つのが分かる。

「……でも…」

ハセヲはぎこちない動作でエンデュランスの肩を叩く。

「なにもしんぱいすることないだろう?」

笑顔が引き攣る。


「…そう、だよね……」

納得したのか、途端にエンデュランスの顔がぱあっと明るくなる。

「…そうだよね。ボク達はずっと一緒だもんね……」

「そうだな…」

「ふふ…」

「あ…あははは……は…は……はあぁ」

引き攣り笑いが溜息に変わる。










「ハセヲ…」





「ん?」

ハセヲは安堵していて、伸ばされた手をかわす事ができなかった。


「わっ…」


壊れ物を扱うかのように優しく包まれる。










「ハセヲ……大好き」









「……あ…ああ」


突き放そうと思えばできたが、今日のハセヲはそうしなかった。

エンデュランスの言葉に罪悪感を感じたから。

けれど。



「ハセヲ。いつかは結婚しようね…」



ぽつりと呟いたそのエンデュランスの言葉に、ハセヲはまたも盛大な溜息をついて肩を落とした。














ほのぼのした感じで仕上げてみました。
この記事実際にあるんですよね。
初めて見た時は「ええっ!そんなイベントあるの?見てぇ〜」なんていってたなあ、私。
だもんで既出されてるネタかもしれませんが、エンハセVerで書いてみました。
機会があったら他のCPでも書いてみたい。