エンハセ。二人がお別れする話です。とってもシリアスです。
L O S T W I N G
愛してる。
愛してる。
キミなしでは生きてゆけないほど、愛してるんだ。
だけど、ボクはキミを……。
殺してしまうかもしれないから。
「ハセヲ……ボクら、別れよう…」
その台詞を言うのに、どれだけの勇気が必要だったかキミは解る?
冷静を装うけれど、本当は胸の痛みに押し潰されそうになっているんだよ?
静寂なエルディ・ルー。
初めてキミと出会ったのも、キミを好きになったのも、キミに好きだと告げたのも。
この場所だった。
キミとの思い出がここにある。
楽しかったことも、辛かったことも。
キミとボクだけが知る秘密も。
だから、別離を切り出すのも、ここが相応しいと思った。
「なん…で…?」
震えた声が小さく響いた。
「なんで…急にそんな事言うんだよ……」
「…………………」
辛くて、ハセヲを見る事ができなくて、目を逸らすけれど、重たい空気は消える事はなくて。
「なぁっ、何とか言えよ!」
「………ッ」
急に腕を掴まれて、そこから感じるじんわりとした温もりに愛しさが込み上げる。
「……離して、ハセヲ」
お願い、だから。
これ以上触れないで。
キミを壊してしまうから。
「………… ん…で…?」
それは、あまりも小さな声だったから。
キミの顔を見て、はっとした。
「…なん…で………?」
白いキミの頬を滑り落ちる透明なしずく。
いくつも。
いくつも。
「俺のこと、嫌いになった…?」
「……………………(違うよ)」
「もう…好きじゃ、ないの…?」
「……………………(愛してるよ)」
「なんで、何も言ってくれないんだよ……」
「……………………(お願い、これ以上)」
ここにいないで。
「さよなら、ハセヲ」
そう言って背を向けると、とさ。と軽い音と共に嗚咽が聞こえた。
ああ、ハセヲが泣いているんだ。
ごめんね。ごめんね、ハセヲ……。
心の中で何度も謝るけれど、それはキミには届く事はないのだろう。
泣き声に、胸が締め付けられるけれど、振り向く事はせずにカオスゲートへと歩む。
「…っく…エン…ッ…まって…ぇ…」
自分を呼ぶその声に呼応するように、景色が滲んでゆく。
それで漸く、自分が泣いているのだと気付いた。
「ハセヲ……ごめんね」
「い…やだぁ!!!!!!!」
転送の光に包まれながら誰にも聞こえないように囁いた声は、ハセヲの悲痛な声にかき消された。
愛してる。
愛してる。
キミなしでは生きてゆけないほど、愛してるんだ。
だけど、ボクはキミを……。
愛しすぎて
殺してしまうかもしれないから。
だから、これがキミを救う、たったひとつの手段。
「愛してるよ、ハセヲ」
Lyricoさんのタイトルと同じ曲の歌詞の一部がすごく切なくて、エンハセに反映させてみました。
でもこのままじゃ、救われないので、続編を書く予定です。
2007.5.12 UP