リアルのお話です。薫×亮。
























朧 月






夜になると恋しくなる。

彼、一ノ瀬薫の事を思い出すから。

柔らかい月明かりに照らされて、亮はそっと月を覗く。

今宵は朧月夜。

霞がかった月をぼんやり眺めていた。
 


一ノ瀬薫。


すらりとした長身に誰もが見惚れる端整な顔。

電波系だけど、引き篭りだけど亮にだけは優しい。

秘密の恋人。


彼と会えなくなって二週間近くが経とうとしていた。

原因はテスト。

運悪く中間テストと全国春の模擬試験が重なったのだ。

進学校に通っている亮にとってはテスト三昧というのは日常茶飯事だったが、エンデュランスと出会ってからは初めての事だった。





「そんなの嫌だ………」

「二週間なんてすぐだって」

べそをかくエンデュランスにハセヲはそう言って慰めた。



  「そう、二週間なんてあっという間だよ…」
 
溜息をついた後卓上カレンダーを手に取る。

「あと、四日…」

先ほどから何度も見ているカレンダー。

何度数えても日付は早く動く事は無かった。

「…薫……」

切なげに囁く。

気を落ちつけようと机に向かい参考書を開くが全く頭に入ってこない。

浮かぶのは彼の顔だけ。

「駄目だ……」

電気を消して、月を眺める。


彼と会うのはいつも夜。

人ごみが嫌いな彼は誰もいない川べりや防波堤で話すのが好きだった。

月明かりに照らされた薫は男の亮が見ても、いつもよりもさらに綺麗でどこか儚げで月に攫われそうに見えた。

怖くて亮は必死に薫の手を握った。

「…薫……」

何度目かわからない呟き。

「クソッ!なんでこんなに女々しいんだよ、俺」

勢い良くベッドに倒れこみきつく目を瞑った。

「…かおる……薫…」






『…亮……』

遠くから声が聞こえた。
「…かおる?」

身体を起こすけれど誰の気配も無い。

「…どこ…?かおる……」

指先が虚空を彷徨う。

「薫…会いたいよ……」

涙が頬を伝う。

『亮……大好きだよ…』

優しい声が脳裏に響く。

「俺も…俺も、薫の事大好きだよ……」





目を閉じて脳裏に焼きついた彼の笑顔を何度も何度も思い浮かべた。


『忘れないで…ボクはいつでもキミの傍にいるよ』


その言葉に安心したように、そのまま亮は深い眠りについた。

夢の中で薫に会えることを願って。














リアル率が高い私の小説…。
何だかポエマーな感じになってしまいました。
ハセヲの時は随分横暴な喋り方ですが、亮の時は大分可愛らしくしてあります。なんせ良いとこの坊ちゃんですから。