オ←ハセ←エン。みんな片思いのお話です。
P l e a s e s h u t i t t o y o u r c a g e
好きだった。
あの頃、疑うなんて言葉は全く存在しなくて。
全てを賭けてもいい。とまで思っていた。
上手くやれば褒めてくれたし、失敗すれば優しく慰めてくれた。
いつも傍で笑っていてくれた。
信頼していた。
好きだった。
全てだった。
愛されていると思っていた。
そう。
思っていたのに。
あいつにとって、俺なんて片手間の存在でしかなかった。
「お前はよくやってくれている」
…それだけ?
離れて寂しかった。とか。
会いたかった。とか。
たったの一度も、言ってくれる事はなくて……………それで、漸く気付いた。
ああ。
俺って、その程度なんだ。
何かが、消えてなくなるような、冷たい、寒い感情が湧き上がる。
「もう、傍にはいれない」
そう言ったのは本心じゃなかった。
賭けだった。
もしかしたら。
そう、期待していた。
なのに。
「…そうか」
返事はそれだけ。
それで、全てが終わった。
好きだったのに。
求められていたと。
信じていたのに。
散々利用されて、騙されて、挙句……捨てられた。
でも。
オーヴァンは、いつもと変わらない眼差しで見つめるから。
また、期待して、馬鹿みたいだと思った。
「馬鹿みてぇ」
「どうかした、ハセヲ?」
小首を傾げたエンデュランスは、そっと頬に触れた。
壊れ物を扱うような優しい手つき。
あいつ…ーオーヴァンーとは触れ方が正反対だった。
オーヴァンは、もっと力強くて、荒々しかった。
頭を撫でるにしても、エンデュランスのように愛しむ手つきではなく、髪を乱されるくらい激しいものだった。
でも。
エンデュランスには、その繊細な外見からは予想できないほど激しい感情をぶつけてくる。
独占欲も人一倍で、普通のやつなら神経がもたないだろう。
けれど、俺はこの激しさが欲しかった。
もう二度とオーヴァンの所まで行けないように縛って欲しかったから。
捨てられたというのに、もう、二度と会わないとまで決めたのに、未だに未練がましく想い続けている自分が嫌だった。
会わなくなって何ヶ月だろうか。
感情が麻痺して、おかしくなりそうだった。
ログインしてもリアルにいても考えるのは彼の事ばかり。
好き。
会いたい。
またあの頃に戻れるなら、なんだってするのに。
忘れようと感情を捨ててしまおうと決めたのに、いつまでたっても受け容れられなくて。
「ハセヲ…嫌だよ……」
「え…?」
振り向くと、エンデュランスが今にも泣きそうな顔をしていた。
「…ボク以外の誰かの事…考えないで……」
痛いほどの力で抱きしめられる。
嫌だ。嫌だよ。とうわ言のように呟きながら、ますます力は込められてゆき、身動きすら取れない。
「…エン」
「黙って…」
至近距離で呟き、激しく唇を奪われた。
全てを奪いつくす、激しいキス。
込められた腕の力は緩むことがなくて。
その激しい想いで雁字搦めにされて、呼吸すらもできない。
でも、その事に酷く安心する。
ああ。
これでもう、大丈夫だと。
囚われれば、二度と逃げられない。
それでいい。
それがいい。
心なんてなくてもいい。
優しさなんていらない。
狂気のような愛と、閉じ込める檻があるのなら。
「Please shut it to your cage?」
なんだか誰も救われていないような…。
オーヴァンがハセヲを利用して、ハセヲがエンデュランスを利用して、エンデュランスは騙されたまま。
オーヴァンってSっぽく見えるけど、誰よりも人が傷つくのを悲しんでる優しい人だといいな。
この人は常に言葉を選んで話しているから、そんな気になってしまいます。
それもオーヴァンの作戦?!
2007.5.15 UP