S o n g f o r . . . E n d r a n c e V e r .
二人が出会った事には意味があるのだと、信じているから。
彼は輝いていたのに、いつだって闇の中のボクの事を気にしてくれていた。
今思えば出会った時に、好きになってしまうという予感はあった。
リアルで生きることを放棄したボクにとって、リアルで生きようとする連中は眩しかったし、嫌悪もしていた。
彼もその中の一人だったけど、彼だけは特別だった。
全てから逃げ出したボクを迎えに来てくれたのは彼だけだったから。
「もう、ネットゲームやめる」
数ヶ月前に斬りだした彼の言葉。
やっぱり、キミもリアルに還っていくんだ。
判ってはいた。でも、心のどこかでは期待していたんだ。
ずっとボクと一緒にいてくれたら……って。
悲しかった。
キモチは繋がってると信じていたのに。
彼は意図も簡単にボクを切り捨てた。
悔しかった。
リアルが、リアルに生きる全てのものに彼を奪われたようで。
だから、酷いことを言ってしまった。
「ハセヲは強いからリアルでもここでも独りで生きてゆけるんだよね。でも、ボクは……」
その時、彼は酷く傷ついた顔をして、ボクは取り返しのつかない事を言ってしまったんだと気づいた。
それでも、ごめんね。という言葉が出てこなくて、彼は、ボクの元を去った。
愛してるのに。
「どうして、ハセヲを傷つけた……?」
信じていたはずのなに。
「ボクは、疑ってしまった……」
認めたくはなかった。
「どれほど想いあっても、決してひとつにはなれないんだ」
けど、判ってしまったんだ。
それから本当に、ボクと彼との縁は切れた。
ログインはおろかメールも途絶えた。
毎日交わしていたものがなくなった時、思い知らされた。
こんなにも、彼が好きだったのだと。
ボクはまた過ちを犯してしまったのだと。
「ハセヲ…ハセヲ……ごめん、ごめんね……」
誰もいない裏路地で謝罪を述べる。
どうして、あの時言わなかった?
どうして、あの時言えなかった?
後悔しても、もう、彼はこの世界を飛び立ってしまった。
「メール?」
だから、それを見た時は信じられなかった。
たった一言。
『会いたい』の文字。
そこにどんな想いが込められているのかなんて判らない。
きっと嫌われているだろう。
文句でも言いたいのかもしれない。
でも、ボクはキミを愛してるんだ。
もう、二度と放したくない。
どれだけ彼がボクを嫌っていても。罵られても、傷つけられても。
「エン、デュランス?」
聞きなれた発展途上の声。
恐る恐る振り返ると、子供のような怯えた顔のキミ。
どうしてそんな顔をしているの?
ボクの事、嫌いになったんじゃないの……?
戸惑っていると、もう一度声をかけられて、もうどうしようもなくて手を伸ばした。
柔らかい感触。優しい人肌の温もり。
じわりとハセヲの眸に浮かぶ涙。
それでやっと気づいた。
ハセヲは、こんなボクをまだ見捨てないでいてくれたんだと。
愛しさと切なさが込み上げて、ありったけの力を込めてハセヲを抱きしめた。
「ごめん……ごめんね、ハセヲ……」
彼が流した涙の分、ボクは彼を幸せにしよう。世界でたったひとりのハセヲの為にボクは生きていくと決めた。
どれだけ好きだと言ってくれても先は判らない。不安もこの先消える事はないだろう。
けれど、この想いの分だけキミを幸せにするから、だから傍にいて。
ハセヲがゲームをやめるのは受験の為だからです。
2008.02.05 UP