切なくヲトメちっくです。エンハセ。
























S o n g f o r . . . H a s e o V e r .










愛しているのに、どうしてキミのことが信じられないんだろう。






走っていた。
あいつの元に向かって。

振り返る様々なPCの視線を掻い潜って、向かうのは裏路地。
息せき切って、視線を浴びて、それでも走る事は止めない。
あの場所で待っているやつがいるのだと、そう思うだけで、鼓動は増す。


「ハセヲは強いからリアルでもここでも独りで生きてゆけるんだよね。でも、ボクは……」


数ヶ月前に最後に呟いたあいつの言葉。
どうしてそんな事言うんだよ。
辛いのはお前だけじゃないのに。
俺だって辛いのに。
俺達が生きていかなきゃならないのはリアルなのに。
いつまでもネットに縛られてちゃ、前には進めないから。
だから、早く大人になって、独立して……こいつの傍にいたいと、思っていたのに。


でもそんな事を言われて、悔しくて、悲しくて。好きだと言ってやれなかった。


「……勝手にしろ」



あれからずっと連絡もしていない。
あんな別れ方をしたせいか、向こうも連絡がしづらいのかメールの一件も入ってきていない。


元々考え方が違うんだ。
所詮、こんなもんなんだ。

そう、思うのに。




なんでだろう。


こんなにも、胸がイタイ。

こんなにも、苦しい。


世界中にこんなにたくさんの人がいるのに。
会いたいのは、想うのは、たった一人だけ。




「会いたい」


そう打ち込んだ簡潔な内容のメールの返信もまた簡単なものだった。



『マク・アヌの裏路地にいるよ……』


もう飽きられているかもしれない。
嫌われているかもしれない。

それでも……もう、俺は止められなかった。

心が、体が、抑えきれないくらい求めていた。
会いたいと。



「エンデュランス…!」


人気のない薄暗い裏路地。
振り向いた勿忘草色の髪。
舞い散る薔薇の花びら。

同性なのに、女のように繊細で、頑な愛情を持つ恋人。


「エン、デュランス?」


振り向いた表情は暗闇で判らない。
不安で、怖くて、でももう一度その名を呼ぶ。

「ハセヲ……」

答えるように、少し戸惑いを含んだ声が返る。
嫌われたのだろうか。
そう考えるだけで、体は恐怖で震える。

けれど。

暗闇から伸ばされた青白い指先が俺の頬にかかった。
久しぶりのその感触に、じわりと涙が浮かぶ。
ぽたりと落ちる前にはもう、抱き寄せられていた。


「ごめん……ごめんね、ハセヲ……」


いつもより優しいトーンで囁くエンデュランスに、バカみたいに俺は泣いた。






どこへ行くこともできない。この想いを残しては、あなたの傍から離れる事はできない。

愛しいのに、残酷なほど、あなたは俺の心を締め付けるんだね。














某バンドの曲がモデルです。
世界中〜っていうとこ大好きです。
2008.02.05 UP