エンハセ。二人が上手く纏まるまでのお話。ハセヲ・亮視点。
























T R U T H / O R I J I N / 0 






どうしてこの手を取ってしまったんだ?














他人を思いやる余裕なんてないはずなのに。














なぁ、オーヴァン。志乃。
























もう…独りは嫌だよ。














ー 葛 藤 ー






「ハセヲ…ボクを独りにしないで……お願い…置いていかないで」


どうして、その言葉を受け入れてしまったのか。

自分でも解らなかった。


いや、認めたくなかっただけなのかもしれない。



こいつも、エンデュランスもアトリと同じ。

俺に『何か』を『求め』やがる。



ウザったい。

優しい言葉をかけてやったのが間違いだった。



あんなに激しく求められるのは初めてで、

その手を取ればきっと……満たされるのは解っていた。

依存以外何もないエンデュランスは絶対に俺を裏切らない。

いっそのこと、全て忘れてあいつに逃げれば…。

そう考えた事もあった。



俺はこいつを救ってやれるかもしれない。

じゃあ、俺は?

誰が俺を助けてくれるの?



それは、エンデュランスじゃない。



俺を救ってくれるのはオーヴァンと志乃しかいない。


だから、これ以上近寄ってはいけないんだ。

「ハセヲ…」

何の躊躇いもなく真っ直ぐに伸ばされた腕。



駄目なんだ…。

駄目…。



「ハセヲ…ボクは……ハセヲの為に、何でもするよ…」



止めろ…。惑わせるな……。



「例え、この世界が壊れてしまっても…ハセヲがそれを望むなら……」




















俺は、その手を取った。


愚かな事をした。


自分の行為を悔いたけど、それはもう既に遅かった。



俺に依存したエンデュランスはもう二度と俺から離れない。




そう、例え俺が死んでも離れることはない。





解っていたのに…。




また、一歩遠ざかった。

























「ハセヲさん」

人気の無い裏路地。
小声だったけれど、それは良く通る声で俺は振り向く。

「アトリ」

いつもと変わらない明るい笑顔で近づいてくる。

「こんにちは、ハセヲさん」

「……」

アトリと二人だけで会うのはあの日以来初めてだった。



…解らない。

拒絶されたのに、なんでこいつはこんなに平気でいられるんだ。


「あれ、ハセヲさん今日は一人なんですか?」

「あ…いや…」



口篭った俺に急にアトリが仄暗い笑みを零す。

「ああ…エンデュランスさんと待ち合わせ…ですか…」

目を合わせることができなかった。

アトリをこんな風にしてしまったのは他ならぬ俺なんだから。

「ねぇ、ハセヲさん…あの人も、私と一緒ですよね」





「どうして、あの人はよくて私は駄目なんですか…」

呑み込まれてしまいそうな程の『負』の感情が辺りを覆う。

「……俺は」

女の力とは思えないくらい強く肩を掴まれた。

「…っつ」

「教えて下さい…私と、あの人。どこが違うのか…ねぇ、ハセヲさん」

益々強まる力にアトリの指先が白く染まる。

「ねぇ、聞いてます?ハセヲさん……なんで!!」

そう叫ぶとさらに爪を肩に喰い込ませてきた。激痛が肩を走る。

「…った…!」

「どうしていつも私なの!!!???どうして私ばっかり!!!!」

チリチリとした焦げるような熱。痛み。

それらがアトリの感情毎流れ込んでくる。



「ごめん…だけど…俺は」





パシン。

乾いた音が俺の頬に響く。



涙を零しながらアトリはきつく俺を睨む。

ただ、俺はされるがままに微動だにしなかった。

ここで優しい言葉を掛ければまた期待させてしまうから。


これ以上、立ち止まるわけにはいかない。





「壊れればいい…私を見てくれないハセヲさんなんて…」





「アトリ…」


涙の粒がマク・アヌの夕陽に輝く。


「バカみたい……ハセヲさんも、私も…」



その呟きは誰に届くことも無く空へと溶けた。















「ハセヲ、どうしたの……?」

待ち合わせにやってきたエンデュランスは腫れた頬にそっと触れた。

「…って!」

「痛かった…?」

慌てて手を放すエンデュランスが可笑しくて少し気分が軽くなった。

「ちょっとだけな」







「誰……?」

「え?」

「誰にやられたの?」

「………」

何も応えない俺の頬をもう一度撫でる。

「仕返し、してこようか……」

「止めろ…」

その時、エンデュランスは今まで見たことも無いくらい悲しそうな顔をした。

ドキリと心臓が跳ねた。

「ねぇ…ハセヲ…ボクを荷物」
「止めろ!」

こいつは聡い。

他の事は鈍いのに、俺の事は何でも瞬時に理解してしまう。


「いつか…キミの横を歩ければいいのに」

「ゆっくりでいい…急にやろうとすると、壊れる」

そう、アトリの望んだように。

「ハセヲ…」

「キミが望むなら、ボクは…この命だって惜しまない。

 この世界を捨ててもいい。

 だから……ハセヲを想う気持ちだけは…許して」

降り注ぐ夕日に混ざって一粒の温かいものが頬に落ちた。

「エン……」

そして、それを確かめる時間も無く柔らかい唇が俺を覆った。

初めて交わしたキスだった。

「愛してるから…」

その言葉は…きっと嘘じゃない。

そう思う。


けれど、

俺はまだ『答え』を出せずにいた。


















Game Over or To be Continud...?











前データが消えちゃったので考えながら書いてたら意味解らん事に……。

ハセヲ一人事風味でした。